この日に

長門湯本温泉 恩湯

リベンジの旅と言ってもいい。
2024年1月 湯道展に赴いた。展示を見た後の”恩湯”への入浴を楽しみにしていたが、
なんとまさかの月イチの定休日。
湯道展のスタッフさんと”オーマイガ!”と笑い合った冬の日。

あれから数ヶ月、再度の訪問。約5時間車を走らせた。今日は営業している。
かわいらしい内装の建物。脱衣場あたりからもう硫黄の匂いがする。
洗い場で体を洗い、かけ湯をし、浴槽へと向かう。

“漂っている空気が違う”

まず、感じたのはそれ。
しめ縄で区切られた浴槽の向こう側。
キャラメル色の岩盤が重なり、その重なりの上に鎮座する人物。
思わず手を合わせたくなる、神聖な光景。
一人浴槽でしばらく声もなく見つめていた。
ふと振り向くと、お年を召した女性が静かに湯に浸かっていらっしゃった。
今の今まで一人だと思っていたので、びっくりして大きな声が出た。
「なんだか、一生懸命見てらっしゃったから、静かにしておいた方がいいかしら、と思って・・」と
笑っておっしゃる。
それがきっかけで、その方としばらくおしゃべりをした。

「今日の”お燗”は少し熱めね。」
日によって異なる湯温を、お燗と表現されていたのが印象的だった。
一緒にあがり、脱衣場で暑がる私のためにイスを勧め、扇風機を回してくださった。
受付の方も、床空調の位置を示して「足を伸ばして涼んだらいいわよ。」と
湯上がりの楽しみ方を教えてくれた。

体がほこほこするのは、湯の効能だけではないのかもしれない。
岩盤からコンコンと湧く源泉から感じたのは、悠久の時の流れ。
今年家元は還暦を迎えたと聞く。
鎮座する住吉大明神が “まだまだ若いのう”と、しめ縄の向こうで呟いた気がした。

<湯屋情報>
湯名:長門湯本温泉 恩湯
住所:山口県長門市深川湯本2265番地
WEB:https://onto.jp/

ゆりまろ