変わったものと、変わらないもの。

焼津グランドホテル

私の祖母には、「かっちゃん」という洋裁学校に通っていた頃からの友人がいる。
かっちゃんは、幼い頃から祖母にくっついて遊びに行っていた私の事も、
自分の孫のように可愛がってくれた。
私の誕生日が近くなると、「みんなでお泊まりしよう」と
毎年焼津グランドホテルを予約してくれた。
母と祖母と、かっちゃんと泊まるのが毎年楽しみだった。
6歳離れた妹が母のお腹にいることを知ったのも、このホテルだった。

当時幼稚園児だった私を連れて、かっちゃんは一緒に温泉に入ってくれた。
背中を流しあって、一緒にお風呂に浸かる時間が、私は大好きだった。
チェックインして1回、夕食が終わってから1回、そして朝食の前に1回。
滞在中は、最低でも3回温泉に浸かった。
その全てに、かっちゃんはいつも楽しそうに付き合ってくれた。

それから10数年。
あの頃幼稚園児だった私は、社会人になった。
平日に取れた連休、せっかくだし泊まりでどこかふらっと行こうかなと考えていた私に、
母が言ってくれた。

「久しぶりに行ってきたら?」

祖母とかっちゃんと、10数年ぶりの焼津グランドホテル。
今回は、私が予約を取った。
数年前にリニューアルしたそうで、サービスの形態や客室は大きく異なっていたものの、
客室に入ってまずする事は同じだった。

「かっちゃん、お風呂行こ!」

お風呂もリニューアルして綺麗な内装になっていたけれど、
どことなく懐かしい雰囲気を感じた。
それは祖母もかっちゃんも同じだったようで、
「なんだか面影があるねえ」と嬉しそうに言っていた。

3人で並んで背中を流しあって、大きな湯船に浸かる。
湯船から見えた富士山と大海原と、
隣で楽しそうに話すかっちゃんと祖母の笑顔は、あの頃と同じだった。

<湯屋情報>
湯名:焼津グランドホテル
住所:静岡県焼津市浜当目1489
WEB:https://www.sn-hotels.com/ygh/

真依