長風呂とコーヒーと小さな幸せ

家風呂

まだ冬の寒さが残る夜、
しんとした台所でほどよく冷めてきたカフェインレスコーヒーをぐっと飲む。

こういうちょっとした贅沢も、思えば風呂と同じで当たり前ではなかったりする。

そういえば今日の湯は長風呂であった。
家の者は皆そろって早風呂派なので、
我が家では「風呂はさっさと上がって然るべし」というのが暗黙の了解なのだ。

そんな家の中で唯一長風呂に浸かりがちな私は異端であり、
風呂の入り方に関してはあまり良く言われたためしがない。
そんなだから当然、今日の湯には罪悪感がつきまとっていた。

そんなことをぼんやり考えていて、ふと思う。

「このコーヒーと同じで長く湯に浸かることだって、
誰にでも許されている小さな幸せなんじゃないか?」

そうだ、そもそもこんな些細なことで誰かの許しが要るのもおかしな話ではないか。

こんなことは大したこともない気付きだろう。
しかし今なにか大切なものを見つけた気がする。

小寒い台所でコーヒー片手に湯と向き合ったこのひとときが、
ほっと温かくなった気がした。

寅ねこ