お風呂ってタイムマシーン
お風呂の幸せ作文コンクール 「おぼろタオル賞」受賞作品
お風呂とは私にとってどんな存在なのだろうか。ゆっくり湯船に浸かりながら考えてみた。
お風呂は一日の疲れや汚れを落としてくれる存在。身体も心もポカポカにしてくれる存在。
時には1人で自分と向き合う静かな時間をくれる存在。いろいろな存在である。
私が生まれて初めてお風呂に入った日から、今日まで家のお風呂はずっと私のことを見守ってきた。いや、私が生まれて来る前から家族みんなのことを見てきたのだ。
お風呂に入るとふと祖父母のことを思い出す。10年以上前に亡くなった祖父母も、毎日このお風呂に入り、こうやって疲れを癒やしていたのだろう。大人になった私が、もし今、祖父母に会えたら何を話すのだろうか。とりあえず、ピーマンと人参を好き嫌いせず食べれるようになったことは伝えておこう。ひとりごとのようにお風呂で呟いてみた。なんだか聞いてくれている気がして、心が温かくなった。
小さい頃はよく遊ぶのに夢中になって、母親に「早くお風呂に入りなさい」とよく怒られたものだ。入ればお風呂場で遊び、脱衣所まで水浸しにしてまた怒られる。あの頃の私にとってお風呂は、弟たちと一緒に入る楽しい場所だった。どちらが入浴剤を選ぶかじゃんけんしたり、ゴーグルをつけて風呂の中を覗いてみたりした。
普段すっかり忘れているようなささいな記憶も、このお風呂に浸かると昨日のことのように思い出す。入浴というのは日常の一コマかもしれないが、こうやって思い返してみれば、たくさんの幸せに溢れていたと大人になった今しみじみ感じる。またその思い出が、また明日からも頑張ろうと私に勇気と元気をくれる。
あの頃とは、生きている環境や見えている社会、抱えてる問題も違うが、ここに帰れば、大切な気持ちを思い出し、ありのままの自分でいられる。私にとってお風呂は過去と未来がつながる大切な存在である。